分布帰還型(DFB)半導体レーザー

 レーザーとは、輻射の誘導放出による光の増幅(Light amplification by stimulated emission of radiation : LASER)のことである。鋭い波長選択性をもつグレーティングを半導体導波路内に設けて帰還を行わせれば、半導体レーザーのコンパクトさを損なわずに動的単一モードレーザーを実現できる。この手法を用いた半導体レーザーとして、グレーティングを活性区間(電流注入区間)の内側に設けた分布帰還型(Distributed feedback: DFB)型半導体レーザーがある。 DFBレーザーは、単一波長であるため、高速通信・遠距離通信に向いている。特に発振波長1550nm1310nmはそれぞれ伝送損失、波長分散が少ないことが知られ、広く使われている。

 

 

 

利得変調

図に利得変調によるパルス光発生法の原理を示す。利得変調とは、半導体レーザーに特有のパルス光発生方法であり、ナノ秒周期の正弦波(青線)を注入することにより,ピコ秒の時間幅のパルス光(赤線)を発生させることができる。このように遅い変化の信号からそれより高速な信号を得られるのは、レーザーで用いられている誘導放出に本質的に存在する非線形性を利用しているためである。半導体レーザーの緩和振動周波数が1.25 GHzであるため、その付近でレーザーを変調することで、スペクトルを広げることができる。

 

 

自然放出光(ASE)雑音

2準位系において、上準位に励起された原子は光を放出し、下準位に落ちる。これを誘導放出(Stimulated emission)といい、逆に下準位の原子に光を入射して、上準位に励起することを誘導吸収という。物質が光を放射する仕組みには、この誘導放出の他に自然放出(Spontaneous emission)がある。自然放出は上準位にいる電子が、寿命となる時間が経過すると自然にエネルギーが低く安定な下準位に遷移する。そのとき反転分布状態のときの利得と同じ帯域を持った光が放出される。これを自然放出光という。半導体レーザーでは、この自然放出光の一部が種光となりレーザー発振するが、そのほかの一部は種光とならずに利得により増幅されて放出される。この成分は信号成分に対して雑音成分となり、これを自然放出光(Amplified spontaneous emission: ASE)雑音という。ASE雑音は偏光、位相、振幅などがランダムであり、白色雑音であるため、すべての周波数領域に存在する。

 

 

時間ジッター

 利得変調した半導体レーザーからは数十ピコ秒の時間幅を持つ光パルスを得ることができるが、この時発生する光パルス列には時間ジッターが含まれる。時間ジッターとは、光パルスの立ち上がりタイミングが理想的なパルスの立ち上がり時間に対して時間軸方向に揺らぐ現象であり、レーザー自身から発振される自然放出光による光子のランダムな揺らぎによって生じると考えられている。下の図は時間ジッターを直接観測したものである。

 

 

振幅ジッター

単一モード半導体レーザーに比べて、多モード半導体レーザーから発振される利得変調パルスに生じる時間ジッターは顕著に抑制される。しかし、各モードにおけるパルス出力を観測すると、時間軸方向での変動に対して、強度方向の変動が増大している(上図)。このとき、ノイズの影響により、発振に寄与するモードが周期ごとに異なるため、発振の同時性が失われる。下図に振幅ジッターの様子を示すため、スペクトルのシングルショット2例を示す。